ご家族の中で、片麻痺の方がいらっしゃる場合、御本人もしくは家族の介助で着替えをする時困ったことはありませんか?どちらか一方の手足がうまく動かせない時、着替えひとつにも苦労することありますよね?
そこで、この記事を読むと、
- 片麻痺の方の更衣介助する際のポイントがわかる
- 片麻痺の方の更衣介助の具体的な手順がわかる
- 片麻痺の方の更衣しやすい衣類選びがわかる
ひとつひとつ解説していきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね!
片麻痺の方の更衣介助:詳しい解説とポイント
ここから詳しく解説しますね。このワードは覚えておきましょう!
脱健着患とは?
左右どちらかに片麻痺のある方を対象に更衣介助行う脱健着患とは、
- 脱健(だっけん)・・・健側(けんそく)=麻痺がない方から脱ぐ
- 着患(ちゃっかん)・・・患側(かんそく)=麻痺がある方から着る
つまり、片麻痺がある場合の更衣介助は、健側(麻痺のない側)から脱がせ、着るときは患側(麻痺のある側)から行います。この順番を「脱健着患」と言い、更衣介助の基本ルールとなります。
衣類を脱ぐときは健側から、着るときは患側から着ることで、麻痺がある側をあまり動かさずにスムーズに更衣介助が行えます。介護する人もされる人も負担軽減できますので、着替えるときは「脱健着患」と復唱しながら行いましょう。
片麻痺の方の更衣介助の基本原則
片麻痺の方の更衣介助を行う際には、以下の基本原則を守ることが重要なポイントです。
左右どちらかに片麻痺のある方を対象に行う更衣介助は、着脱時の痛みや苦痛をなくし、スムーズに更衣介助を進めるため「脱健着患」が基本原則なので、マスターしましょう!
安全第一に努めよう!
片麻痺の方の安全を最優先に考えます。転倒や怪我を防ぐため、更衣前に安定した椅子や室内の環境を整えることが大切です。
片麻痺の方の自主性を尊重しよう!
介助が必要な方でも、できるだけ自主的に動いてもらうことで、リハビリ効果を高めます。介助が必要な部分と自分でできる部分を見極め、介助者は見守り・声掛けしながら更衣介助することが重要です。
更衣介助の声かけと説明は大事!
片麻痺の方に安心感を与えるために、常に声をかけながら、次に何をするかを説明します。更衣介助中は常に声かけを行い、確認を取りながら行うのがポイントです。着替えをするために無理のないペースで進め、片麻痺の方の状態に合わせて調整します。
更衣介助には皮膚の観察も行う
衣類の着脱時に皮膚の状態をチェックし、異常がないか確認します。ここは、肌の観察ができるチャンスですので、よく観察しましょう。忘れてはならないことは、介助者は事前に自身の手の爪のチェックもお願いします。介助中に被介護者の皮膚にあたって、皮膚剥離することがあるので要注意です。
片麻痺の方への更衣介助の具体的な手順
それでは、片麻痺の方の更衣介助するにあたって具体的な手順を解説します。
片麻痺の方の上衣(被るタイプ)の更衣介助
更衣介助の準備
まず、更衣介助を行う前に必要な準備を整えましょう。以下のポイントに注意してください。
・部屋の温度調整: 室温を23〜25℃に保ち、快適な環境を整えます。
・必要な物品の準備: 更衣する衣類、バスタオル、ブランケットなどを用意します。このときのバスタオルなどは、体温調整で寒いときは脱ぐ時肩にかけられますし、プライバシー保護のためにも役に立ちます。
・安全確認: 座りやすい椅子やベッドを用意します。座位(すわること)が保てるように工夫します。麻痺がある方が傾かないように、介助する方は患側がわに立って見守ります。椅子は肘付き椅子がベストです。ベッドであれば、ベッド柵を持っていただき座位が保っているか、体調の声掛け・確認を行います。転倒や転落を防ぐため、安定した姿勢を確保しましょう。
以下、前開きタイプとズボンの更衣介助も準備は同じです。
上衣(かぶり)を脱ぐときの手順
片麻痺の方の脱衣は、健側から行うことが基本です。以下の手順に従ってくださいね。
- 椅子やベッドに座ってもらう: 安定した姿勢で座ってもらいます。介助者は患側に立ちます。
- 前身頃をたくし上げる: 前身頃を胸までたくし上げ、後ろ身頃もなるべく上までたくし上げます。
- 健側の腕を抜く: 健側の肘を抜くようにして片袖を脱ぎます。
- 頭を脱ぐ: 後ろ襟を健側の手で持って頭を脱ぎます。
- 患側の腕を抜く:介助者は手を患側に添わせ、 本人にに患側の袖を抜いてもらいます。
上衣(かぶり)を着るときの手順
片麻痺の方の着衣は、患側から行うことが基本です。
1.椅子やベッドに座ってもらう: 安定した姿勢で座ってもらいます。介助者は患側に立ちます。
2.患側の腕を通す: 患側の腕を袖に通し、肩まで引き上げます。このとき、介護者の手を衣類の袖口から入れ、被介護者の患側の腕を優しく掴みながら、袖を被介護者の腕に通すと、介助がスムーズです。袖をたくし上げておくと通しやすいでしょう。
3.頭にかぶる: 衣服を頭にかぶります。介助者は、衣服の襟首をやや伸ばしながら、被介護者の頭にかぶせます。
4.健側の腕を通す: 健側の手を袖に通します。介助者が袖口を引っ張りながら片腕を通しやすくして着せます。
片麻痺の方の上衣(前開き)の更衣介助
片麻痺の方の前開き上衣の更衣介助の基本手順を解説します。
前開きの上衣の着脱は、被りの上衣と比べて着脱がしやすいと言われます。正しい手順を理解し、適切にサポートしてくださいね。
上衣(前開き)を脱ぐときの手順
片麻痺の方の脱衣は、健側から行うことが基本です。間違えないでくださいね!
1.椅子やベッドに座ってもらう: 安定した姿勢で座ってもらいます。介助者は患側に立ちます。
2.ボタンを外す: ボタンを外していきます。片手でも可能な方にはご自身で行ってもらいます。患側の袖が抜けやすいように介助します。
3.健側の肩を外す: 健側の肩から上衣を外し、肘を少し後ろに引いてもらいます。
4.健側の腕を抜く: 健側の腕を袖から抜きます。介助者が袖を引っ張ると抜けやすくなります。
5.患側の肩を外す: 患側の肩から上衣を外します。可能であれば、健側の腕を使ってご自身で行ってもらいます。
6.患側の腕を抜く: 患側の腕を袖から抜きます。このとき、普段動かす機会の少ない患側の筋肉や関節はとても脆いので、無理に患側を引っ張ると関節の脱臼につながる恐れがあります。注意してケアにあたるようにしましょう。
上衣(前開き)を着るときの手順
片麻痺の方の着衣は、患側から行うことが基本です。
1.椅子やベッドに座ってもらう: 安定した姿勢で座ってもらいます。介助者は患側に立ちます。
2.患側の腕を通す: 介助者は、患側に手を添え一直線になるように支えながら、患側の腕を袖に通し、肩まで引き上げます。袖をたくし上げておくと通しやすいです。
3.上衣を羽織る: 衣服を背中側から健側の腕まで回し、肩に羽織ります。
4.健側の腕を通す: 健側の手を袖に通します。介助者が袖をたくし上げて通しやすくします。
片麻痺の方のズボンの更衣介助
次は、片麻痺の方のズボンの更衣介助の基本手順を詳しく解説します。
ズボンを脱ぐときの手順
ズボンも上衣同様、片麻痺の方の脱衣は、健側から行うことが基本です。
1.椅子やベッドに座ってもらう: 安定した姿勢で座ってもらいます。介助者は患側に立ちます。
2.ズボンのボタンやファスナーを外す: 片手でも可能な方にはご自身で行ってもらいます。できないときは介助者で行い、腰の下までズボンをおろします。
3.健側の足を抜く: 声をかけながら、お尻を少し浮かせる感じで健側の足をズボンから抜きます。被介護者の方はこの時、可能であれば少し立ってもらうと介助はスムーズです。
4.患側の足を抜く: 患側の足は、介助者が踵部(かかと)を支えてズボンから抜きます。
ズボンを履くときの手順
麻痺の方の着衣は、患側から行うことが基本です。以下の手順に従ってください。
1.椅子やベッドに座ってもらう: 安定した姿勢で座ってもらいます。介助者は患側に立ちます。
2.患側の足を通す: 患側の足をズボンに通し、膝まで引き上げます。介助者はズボンの裾のほうから手を入れて、被介護者の足を持って引き上げるとスムーズです。
3.健側の足を通す: 同じように、健側の足をズボンに通し、膝まで引き上げます。
4.ズボンを引き上げる: ズボンを腰まで引き上げ、ボタンやファスナーを留めます。この時も、可能であれば被介護者の方に少し立ってもらうと介助はスムーズです。ただし、ズボンの裾を足で踏んでいないか注意が必要です。
片麻痺の方の更衣しやすい衣類選び
片麻痺の方の更衣介助は、衣類の選び方も注意点のひとつです。「着替えやすさ」に注目し、着脱が簡単な衣類やゆとりのあるサイズを選びます。更衣介助で片麻痺の方をサポートする場合は、前開きの衣類だと手順に沿って進めやすいでしょう。
麻痺や、筋肉低下、関節がかたくなって動きに制約がある拘縮といった方の更衣介助では、「着脱しやすい衣類を選ぶこと」が肝心です。
伸縮性のある素材の衣類
伸縮性のある素材の衣類は、腕を袖に通したり、頭を通す際に伸びてくれるため、着やすくなります。特にストレッチ素材やポリウレタンが含まれた衣類は、着脱がしやすくなります。逆に、伸縮性の低い衣類(ポリエステルやナイロン素材)は、身体の動きが制限されるため動きづらく被介護者に負担がかかり、関節を痛めたりすることもあります。
前開きの衣類
前開きの衣類は、ボタンやファスナーが前にあり、視界が塞がれず安全に着脱できます。また、最初に患側から手を入れやすいという利点があります。被りの衣類は、一見ボタンの留め外しもなく早く着られそうですが、着脱しにくく頭を通す際に一時的に視界が塞がれるため、バランスを崩し転倒してしまうこともあります。
また、ズボンは、ウエストと裾がゴムなどで絞ってあるものが便利ですね。なぜなら、裾が絞ってあると、足先を通した後に足首に裾が固定されるため、楽にズボンを引き上げることができるからです。
絞られてないタイプは、足先を通したあとズボンが下がったりして、つま先やかかとに裾が引っかかり、イラッとします(笑)
簡単に留め具がつけ外ししやすい衣類
前開きの衣類で注意したいのはボタンやファスナーといった留め具なんです。被介護者自身が自立して更衣していただくためにも、留め具のつけ外ししやすい留め具がついた衣類は有効です。
大きめのボタンやマジックテープ、マグネットホックなど、片手でも操作しやすい留め具がついているものを選びましょう。
手入れがしやすい衣類
これも意外と忘れがちなのですが、手入れのしやすさは大事です。家庭の洗濯機で洗える、シワがつきにくい素材の衣類を選ぶと、日常の手入れが楽になります。
表示ラベルを見て、以下の点をチェックして選びましょう。
- 家の洗濯機で洗えるか
- 洗濯ネットに入れる必要があるか
- しわがつきにくいか
素材選びも、負担軽減のために必要となるでしょう。
まとめ:片麻痺の方の更衣介助は「脱健着患」を覚えよう
片麻痺の方への更衣介助は、身体的な支援だけでなく、心理的な支援も重要です。ご家族の中で介助が必要な方がいらっしゃれば、適切なサポートを提供することが求められます。
ご自身で着替えることが難しい方をサポートする“更衣介助”。片麻痺や寝たきりの方の場合は特に、手順を理解してから行わないと安全性を保つのが難しくなります。
そこで大事なチェック項目として、
☐片麻痺の方の更衣介助する前に、環境整備は整っているか
☐片麻痺の方の体調確認、椅子に座っていただくときの安全性に問題はないか
☐着替えやすい衣類を準備できたか
☐更衣介助の基本ルールである 健側から脱ぎ、患側から着る順番の「脱健着患(だっけんちゃっかん)」を守っているか
☐介助者は、被介護者の着替えを見守りながら自主性を尊重しているか
☐介助者は、片麻痺の方の全身状態を観察し、異常はないか
これらをチェックしながら、この記事で紹介した基本原則や具体的な手順、注意点を参考に、安心安全で効果的な更衣介助を実践していただければ幸いです。これからも、頑張って介護するあなたを応援しています!
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